「してるよ。なぁ、ゆず?」
涼はそう言うと私の後ろに回り、私の体をギュッと強く抱きしめた。
私の肩の上に涼の顔が乗る。
私の前で組まれた腕。
右手の人差し指と中指に挟まれたタバコの灰が、風に乗せられヒラヒラと落ちて行く。
「ん?」
「何がそんなに悲しいの?俺と一緒じゃ不安?もしかして、前に話してくれた先生のことが忘れられない?」
「そんなこと……」
私はポツリと呟いた。
『そんなことない』
そう言いたかった。
でも、そう言えない私がいて……。
私はそこで言葉を切ったまま黙った。
「ゆずはさ、俺のことを先生と比べてない?俺のことを先生と重ねて見てない?前に似てるって言ってたよね?だから、ゆずは俺と付き合ったの?」
涼は私の首筋に顔を埋めた。
そして私を抱きしめる腕に力が入る。
何も言えなかった……。
ただ沈黙が続く。
涼は先生にとても似ていた。
顔に声、仕草、全てが似ていた。
世の中には、3人自分に似てる人がいるって聞くけど、涼はそれぐらい先生と似ていた。
最初、涼を見た時にはあまりにも似ていて、体に衝撃が走ったくらい。



