「高校に入学が決まって、両親と電車で学校近くの不動産屋に行く時に、このマンションが電車から見えて……」
「うん」
赤信号が青信号に変わって、先生は相槌を打つと車をゆっくり発進させた。
「周りは普通の家ばかりだから、さっきのマンションが目立っていたのもあるのかもしれないんですけど、両親とあのマンションはどんなお金持ちが住んでるんだろうねって話してたんです。今日、初めて間近で見ました」
そう言った私に先生は再び爆笑。
先生が何でいきなり笑い出したのかわからなかった。
「桜井さんは面白い子だね。さっきのマンションは住んでる人は普通の人ばかりだよ」
「えっ?」
何で先生がそんなこと知ってるの?
「何で俺がそんなこと知ってるのか?って言いたいんだろ?」
私はコクンと頷いた。
「だって、俺、あのマンションの住人だから」
「えっ?…………えぇぇ!」
私は車内に響くくらい大きな声で叫んだ。
「そんなに驚かなくても」
先生はそう言ってクスクス笑ってる。
だって……。
こんな偶然ってある?



