桜井柚葉は俺の方を目を見開き見ている。
「あ、ゴメン……」
俺が謝ると、桜井柚葉は首を左右に振った。
気まずい空気が流れる。
「あ、あの……」
「えっ?あ、ん?」
「電車の時間があるので帰ります……」
桜井柚葉はそう言って軽く会釈すると、俺に背を向けて駅の中に入ろうとしていた。
ここから彼女の住む◯◯町は電車で1時間近くかかる。
だから俺は……。
「ま、待って?」
そう言って桜井柚葉の腕を掴んだ。
足が止まる彼女の肩が軽く跳ねた。
「せん、せ?」
「送って行くよ……」
「えっ?」
「桜井さんのアパートまで送って行くから……」
俺の言葉に彼女は首を左右に振った。
俺が彼女を送って行こうと思ったのは、担任だからなのか、気になる生徒だからなのか自分でもわからなかった……。
ー夏季Side Endー



