夜遅くに街中にいたところを俺に見られて焦ってるのか?
桜井柚葉は、なかなか口を開こうとしない。
彼女に声をかけた以上、そのまま帰るわけにもいかず……。
それは彼女の担任だという理由もあるかもしれない。
「別に、先生は怒ってないよ?」
「…………両親を」
俯いたまま、彼女は呟くようにそう言った。
「ん?両親がどうかしたの?」
「両親を駅まで送って、明日のお昼ご飯をそこのコンビニで買って……」
そう言って、桜井柚葉は駅前にあるコンビニを指差した。
「それから電車で帰ろうと思ったら先生に……」
「そうなんだ……」
俺は桜井柚葉の頭をポンポンとしていた。
小さい子にするように。
自分でも予想外の行動に驚きを隠せなかった。



