「鍵は俺が返しとくから」
「い、いえ、大丈夫です……」
「いいから、どうせ職員室に戻るから、そのついでだしさ。ん」
先生はそう言って手を差し出した。
どうしようって悩んでる暇はない。
ここは先生の言うことを聞いといた方がいいのかな。
私は、ゆっくり先生の側まで歩いて行った。
そして、先生の手の平に鍵を置く。
その時、ほんの少しだけ先生の手に触れてしまって、私の体は電流が流れたみたいにビクンと揺れた。
「あ、ありがとうございます。では、失礼します。さようなら」
私はそう早口に言って、先生に背を向けた。
クスクス笑っている先生の声が聞こえる。
先生と初めてした会話。
凄く凄く胸がドキドキして……。
担任なんだから、これから沢山会話をしていくんだろうけど、今日の会話は私の中で特別なものになっていた。



