お父さんとお母さんが待ってるから今日は帰ろ。
楽譜がないんじゃピアノを弾いてもしょうがないし。
私はカバンを持って、鍵を手に取るとピアノ室を出た。
ピアノ室を出た時、隣の音楽室からピアノの音色が聴こえてきた。
凄く上手い……。
誰が弾いてるんだろう……。
ピアノを誰が弾いてるのか気になった私は覗いたらいけないと思いながらも、音楽室の扉を小さく開けた。
あっ……。
音楽室にあるグランドピアノ。
それを弾いていたのは先生だった……。
胸がドキンと一気に高鳴って、思わず持っていたカバンを床に落としてしまった。
“バタンっーー”
カバンが床に落ちた音が廊下に響く。
と、同時にピアノの音が止まった。
ヤバいっ!
私は音楽室のドアを閉めて、その場から離れようとした。
でも……。
「あれ?桜井さん?」
後ろから先生に呼ばれてしまった。
その場から離れたい私の気持ちとは逆に、足が止まってしまった。



