「ありがとう、ございます」
私は先生から鍵を受け取った。
「ピアノ室の場所を案内した方がいいよな?」
「はい」
今日、この学校に入学したばかりで、ピアノ室や音楽室がどこにあるかわからなかった。
「ついてきて?」
「はい」
私と先生は職員室を出た。
そして先生のあとをついて歩いた。
「入学式早々、ピアノ室を使いたいなんて珍しいね」
前を歩いていた先生が振り返りそう言ってきた。
「私、一人暮らしで……アパートの部屋にピアノないのでそれで……」
「あぁ、桜井さんって一人暮らしだったね」
「はい、どうしてもこの学校の音楽科に入りたくて……。でも、自宅から通うことが出来ないので一人暮らしをすることにしたんです……」
「そうなんだ」
「はい」
「あ、ここがピアノ室ね。今日は1室を使って?」
「はい」
私は渡された鍵でピアノ室のドアを開けた。
中に入って、置いてあったイスにカバンを置いた。



