「あれ?桜井さん、帰らないの?」
自分の席に座ってボーと考え事をしていると、先生に声をかけられた。
私はビックリして、思わずイスから勢いよく立ち上がった。
気付くと周りには誰もいなくなっていて、教室には私と先生だけになっていて……。
「あ、あの……私……」
先生と目を合わせることが出来ず、教室の床に目線を落としたままそう言った。
先生と2人きりの空間。
胸は煩いくらいドキドキしていて、先生と目を合わせると心臓が止まってしまうかもしれない。
「ん?どした?」
先生が教壇から、こちらへ歩いて来るのがわかる。
ダメ……来たらダメ……。
そんな思いは届かず、私の席の前で足を止める先生。
「……アノ、を……えっと……」
「ん?なに?」
先生は下を向いたままの私の顔を覗き込むようにしてそう言ってきた。



