「あっ!そうだ!ゆず?LINEしてる?」
「えっ?」
上の空だった私。
綾乃に急に声をかけられビックリして、綾乃の顔を見る。
「いや、LINEしてるかな?と……。もししてたら交換しよ?」
そう言った綾乃は何か察したように、クスクス笑ってるし。
「あ、うん。いいよ」
私はカバンからスマホを取り出して、綾乃とLINEを交換した。
「じゃあ、私は帰るからね!また明日!」
綾乃はスマホをカバンに入れると、そう言って教室を出て行った。
周りを見ると、あれだけ先生の周りにいた生徒も廊下にいた生徒も、ほとんどいなくなっていた。
入学式早々、ピアノ室を使う生徒もいないか……。
みんな親元から学校に通ってるだろうし、家にピアノがあるだろうし。
どうしよう……。
お父さんとお母さんとの食事までは、まだ時間あるし……。
アパートの部屋に帰ったって、小さなキーボードがあるだけだ。
ピアノ室に行こうか?
その時ーー。



