HRが終わり、お昼過ぎに学校が終わった。
HRが終わった途端に、教壇にいた先生の周りに生徒たちが集まっていく。
教室前の廊下にも他のクラスも生徒たちが集まってくる。
中には保護者と一緒に帰って行く生徒もいた。
私は別に先生と付き合ってるわけでも、彼女なわけでもない。
でも、なぜか私の心はモヤモヤとしていた。
なるべく先生の方を見ないように帰る用意をする。
私の席にお父さんとお母さんが来て、先に帰ることを告げると教室を出て行った。
今日、私のアパートの部屋に1泊して、明日の朝に帰る予定にしている両親。
夜は入学祝いに外食することになっていた。
「ゆず?ピアノ室、使う?」
帰る用意をしている私には綾乃がそう聞いてきた。
「ピアノ室?使うって何?」
綾乃の言っている意味がわからなくて、私は首を傾げた。
「今日から学校のピアノ室が使えてピアノの練習が出来るみたいよ」
「えっ?そうなの?」
今日から使えるんだ……。
「もしかして、先生に見とれていて話を聞いてなかったとか?」
綾乃が意地悪そうな目でそう聞いてきた。
「えっ?ち、違うから」
「ゆず、顔赤いよ?」
綾乃がそう言ってクスクス笑う。
「先生に直接聞いてみなよ」
「え、い、いいよ……」
私は首を左右にブンブン振った。
先生の周りに集まっている生徒の中になんて入れないよ。
しかも先生に声をかけるなんて絶対に出来ないよ。



