「そっか……」
「うん」
フェンスに背をもたれていた柚葉は再び身体を反転させフェンスの方を向いた。
「先生は小さい時、大人になったら何になりたかった?」
「将来の夢ってやつ?」
「うん。小さい時から音楽の先生になりたかった?それとも天文学者?」
「天文学者は考えたことなかったなぁ。小さい時から星を見るのは好きだったけど。小学1年生の時にテレビで見たピアニストがカッコ良くてさぁ、その頃から将来はピアニストになりたいって思ってたかな」
「そうなんだ」
「でもピアニストになれなくて、今は高校の音楽教師をしてるなんて笑えるだろ?」
「そんなことないよ」
柚葉は首を左右に振った。
「音楽の先生だって立派な仕事だし」
「そう言ってもらえて嬉しいよ」
俺はそう言ってタバコを取り出して口に咥えて火をつけた。
柚葉の方に煙がいかないように、口から煙を吐き出す。
「なぁ?」
「ん?」
「俺がなんでピアニストになれなかったか聞きたい?」
「えっ?」
柚葉は目を見開いて俺を見る。
「教えてやるよ」
なんでピアニストになれなかったかを……。



