「せん、せ?」
「桜井さん、どした?」
ベランダでタバコを吸っていた俺は彼女の声に気付いて振り向いた。
「私、そろそろ……」
「えっ?もうそんな時間?」
時間の感覚がなくて、今何時なのかもわからなかった。
「21時過ぎてます」
もうそんな時間だったんだ……。
本当は彼女を家に帰した方がいいのかもしれない。
でも……。
「そうなんだ。あっ!桜井さんも星見る?」
俺はまた彼女を呼び止めてしまったんだ。
帰したくない……。
「星、ですか?」
「こっちおいでよ?」
彼女は、ベランダに出て俺の隣に並んだ。
少し間が空いた微妙な距離。
それでも彼女が隣にいると思っただけで、俺の胸はドキドキしていたんだ。