香山先生はポロポロと涙を流していた。
でも俺の心に何も響いてこないし感じない。
「僕は香山先生を教師としてもピアノでも尊敬してました」
下を向き、涙を流していた香山先生は真っ赤に腫らした目でこちらを見た。
「でもね、生徒を侮辱する発言を聞いて尊敬する心はなくなりました」
「それは桜井さんのことだから?」
「違いますよ。桜井さんだからってわけじゃないです。さっきも言いましたよね?僕は桜井さんも他の生徒も好きだって。頑張ってる生徒を侮辱するのは許せませ。教師って生徒を応援しなきゃいけない立場だと思います」
「ゴメン、なさい……」
今更、謝っても遅えよ。
「帰って頂けませんか?」
「えっ?」
「こんなとこで無駄な時間を使うよりも早く帰って、ご主人と話し合われたらどうですか?」
香山先生は何も言わなかった。
ただ、涙を流し続けていただけ。
泣きながら無言のまま、荷物を持ってソファーから立った。
「玄関まで送りますよ」
「結構です」
香山先生はそう言って、リビングを出て行った。
香山先生が玄関を出た音が聞こえてきた。
俺の口からは深い深い溜め息が出た。
ー夏季Side endー



