ー夏季Sideー



ピアノを置いてある部屋を出た俺は、リビングを通りベランダに出た。


マンションの最上階のベランダ。


周りに高い建物がないから遠くまでよく見渡せる。


スーツのポケットからタバコを出して、口に咥え火をつけた。


タバコの煙が風に流れて消えていく。


ベランダから夜の景色を見ながら今日の放課後の事を思い出していた。


今日のピアノ室の振り分けは俺の担当だった。


実家を離れて一人暮らししている彼女はピアノ室には毎日通っていた。


誰よりも練習熱心で……。


でも今日、ボードに名前がない事を不思議に思いつつも彼女に聞く事もしないで振り分けてしまった。


どうして、ちゃんと彼女に聞かなかったんだろう……。


聞いてれば、彼女はピアノ室を使えたのに……。