「あ、楽譜……」



私の持ち物はスマホと鍵だけで、楽譜を持ってきていなかった。



「楽譜なら好きなの使っていいよ」


「本当ですか?」


「あぁ」



私は本棚の前に立って、楽譜を選んだ。



「これ、借りてもいいですか?」


「いいよ」


「ありがとうございます!」


「じゃあ、俺はリビングにいるから」


「えっ?」


「俺にいて欲しい?」



先生の言葉に胸がドクンと鳴った。



「あ、いえ……」


「俺がいない方が弾きやすいでしょ?じゃあ、ごゆっくり」



先生はそう言って部屋を出て行った。