「そんなことないよ?」 私は笑顔を作って答えた。 けれど脳裏には田中くんの存在が過ぎったのは否めない。 「「…」」 いくら笑顔を作って答えても、2人の表情は曇ったままだ。 「私トイレ行ってくるね」 私はその場から逃げるように教室を出た。 教室を出た瞬間一気に肩の力が抜けた気がした。 「はぁ…」 自然とため息が出てしまう。 私は俯きながら廊下を歩いた。 トイレを過ぎて、ただひたすら。 「早く教室に戻りなさいよ?」 この声── 振り返らなくてもすぐに分かる。 吉田先生の声。