「田中…くんっ…」 愛奈の腕の中で彼の名前を無意識のうちに呟いていた。 「彩…」 こんな苦しい気持ちになるのはなんで? 「どうしたの?」 すると突然横から声がした。 声色でわかる。 田中くんの声。 田中くん、今登校してきたんだ… もう1時間目終わっちゃったよ?… そんなことよりも、今泣き顔なんて見られたくない。 「えっと…」 愛奈はなんて答えたらいいのか分からない様子。 私がこのままでいるわけにもいかない。 1つ深呼吸をして素早く涙を拭って愛奈から離れた。