「田中、く…ん?」 田中くんは私の存在なんか気にせず、ただ黙って誰もいない廊下を眺めていた。 そっちに人なんて… 私はあることに気がついた。 そっちには… 「お、おーーい」 私は何も気づかなかったフリをし、田中くんの目の前に立って大きく手を振った。 すると我に返った田中くんはオドオドしているような気がした。 「あ、ごめん。なに?」 「そろそろチャイム鳴っちゃうよ?」 「…あぁ、そっか」 チクッ── ボーっとしていた田中くんに胸が痛んだ。 「い、行こ?」 それから私達は教室に戻った。