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学年対抗リレー、後半。
我が1年B組に危機が迫っていた。
緊張のせいか、練習では見受けられなかった多数のバトンミスや転倒。
1年B組は所謂「ドベ」だ。
そして次は俺の番。
レーンの向こう側にいるアンカー――俺がバトンを渡す相手――は軽くジャンプしたり手首や足首を回し、ウォーミングアップをしていた。
アンカーは真田。
コイツに頼るしかない。
俺の横を凄いスピードで走っていく上位クラスのランナー。
余裕の笑みで団席に手を振っているのが気に障る。
それを堪えて俺にバトンを渡すクラスメイトを待つ。
真剣なまなざしで走ってくるクラスメイト。
バトンを受け取る体勢になり、少しずつ走り出す。
練習と同じタイミングでバトンが俺の手の中に納まる。
その瞬間
「小島くん!頑張って!」
あの人の声だ。
透き通っていて、清らかで、柔らかくて、強くて。
「先輩っ……!」
俺と先輩は違う団のはずなのに、おかまいなしに俺を応援する先輩。
あ、しまった、とでも言いたげな表情で口に手を当てる先輩。
自然と笑みがこぼれた。
