ザー、と水の流れる音だけが聞こえる。
鼻血は止まったみたいだ。
「はぁ……」
人の前で鼻血を出してしまうなんて。しかも相手は黒木先輩。
引かれたか、ドン引きされたか、気持ち悪がられたか。
どれにしても結末はバッドエンドだ。
さよなら、俺の12年間の片想い。
ありがとう、俺の12年間の片想い。
すっかり落ち込んで教室に戻ると黒木先輩は片付けを済ませ、帰りの準備も済ましているようだった。
「大丈夫?」
優しく声をかけられる。
今はその声が、酷く心に突き刺さる。
「はい、情けないとこ見せてしまってすみません。」
目線が下に行く。
ああ、情けない……。
「そんなことないよ」
黒木先輩は力強く凜とした声で俺に言った。
「ありがとう」
そして感謝の言葉まで。
「いえいえそんなっ……」
感謝されるようなことは、何もしてないんです。
ただ、黒木先輩を守りたくて
……そんなこと、本人の前じゃ恥ずかしくて言えないが。
