俺は園芸部に入っている。

別に花が好きでやっているわけではない。

ただ、誰かに自分の作品を何か一つでも認めてほしくて始めた。

そしたら、園芸大会で見事優勝してしまったわけで。


それはそれは優越感に浸ることができた。

勉強も運動もそこそこの俺にとっては、人生最大の感極まる場面だった。


だから、俺の庭を見もしない癖に見たくないと言ったあの野郎を許せなかった。

そもそもお坊ちゃんというのは好きではない。

のうのうと暮らし、オマケに世間を知らないクソガキ。

あの部屋に閉じこもり、財力に守られ、いつもベッドの上にいる。


病気らしいが、俺にとってはニートと同じだ。

たしかに一昨日事情は聞いた。

しかし会っても嫌いなことには変わりなかった。



2日前───…


『やあ、いらっしゃい。
学校お疲れさま。』

『…どうも。』

たどり着いた先は豪邸だった。

書斎のような場所に案内され、俺は近くのソファに座る。


『引き受けてくれてありがとう。
まずは…そうだな、妹のことから話そうか。

私の妹は美しく優しい子でね、子供が大好きな、いい子だった。

しかし生まれつき心臓が弱く、数年前に死んでしまった。

妹には息子がいて、その息子も、妹の遺伝か心臓が弱い。

だから学校には通わせていない。

家庭教師はちゃんと呼んでいて人並みの頭脳はあるが、コミュニケーション能力に欠けている。

その子の名は、薫。
華宮薫だ。』

女みたいな名前…

『妹が女の子の名前しか考えていなくてね。

…それで、薫君は君と同じ18歳なんだ。
あの子の友達になってやってほしい。』

『はぁ…』

『薫の様子は、週に1度必ず私に報告する事を忘れないように。

そうそう、君に手入れしてもらう庭の事を話さなきゃね。

あの庭は妹が趣味で造った庭なんだ。
妹が死んでからは手入れのできるものがいなくなり、今ではすっかり過去の美しさを亡くしてしまった。

だからそれを、君に生き返らせてほしい。』

『…わかりました。

でも、週5で手入れは難しいです。』

『じゃあ、週3でも…』

『いえ、花は毎日手入れをしないと。』

『…そうかい。
じゃあ、ここに住めばいいよ。

空いてる部屋はいくらでもあるからね。』

『わかりました。
お願いします。』


───────…