〖冬夜side〗
香澄冬夜ーカスミ トウヤー(18)
現在高校3年生。
本当なら就職先探しで忙しい筈なのに。
この一週間で、俺の未来予想図はくるりとひっくり返ってしまった。
一週間前───…
『…冬夜、すまん!
父さんな、会社の金使い込んだのバレてクビになっちまった。』
『…はぁ?』
『大学、どうしても行かせてやりたくて…
会社の金ならいっぱいあるから、と思って…』
『ホント頭悪い。
さすが中卒。』
『すまん!』
『なったもんは仕方ないだろ。
俺が就職するよ。』
『ほんと、ごめんな…』
────…ここまでは、まあよしとして。
3日前───…
プルルルルル…
『ハイ、香澄ですけど。』
『息子さんかな?』
『そうですが。』
『初めまして、Fragrant社長の華宮と申します。』
Fragrant…?
父さんが金を使い込んだ会社じゃないか。
『俺に何のご用でしょう。』
『条件次第では、お父さんを会社に復帰させようと思ってね。』
会社に、復帰…?
金を使い込んだ父さんを?
有り得ない。
『怪しいと思っているだろう、君は。
本当だよ。
君に家の庭師をやってもらえるなら、お父さんを会社に復帰させてあげよう。
条件は2つ。
庭を定期的に手入れすることと、甥の話し相手になること。
週に5回ほどで構わない。
給料はそうだな…40万ほどにしよう。
不服かな?』
よ、40万…
父さんを復帰させるだけでなく、給料まで…
『本当に、庭の手入れと甥の話し相手だけ?』
『ああ。
実は、君の造る庭が妹の造る庭によく似ていてね。
甥の体調もきっと、良くなると思うんだ。』
『甥の体調…?』
『その辺は君がこの話を飲むことにしたら話すとしよう。』
どうやら、偽物ではなさそうだ。
それに、これからの生活費だって困る。
『…わかりました。
お受けします。』
『その返事を待っていたよ。
それじゃあ明日の午後、学校が終わり次第ここに寄るように。』
住所を言って、華宮さんはそのまま電話を切った。
『庭師、ね…』
───────…


