「ここだ」


魔界に来てから、黄牙に案内されたのは一つの街だった。


「おい、まさか、お前達が用意したのって、この街とか言わないよな?」

「いくら何でも、それは・・・」

「いや、ここがそうだ」


凍矢と刹那に返した黄牙の言葉に、花音達は足を止める。

周りを見回せば、街にいる魔族達が花音達の様子を窺っているのがわかったが、襲ってくる様子はない。

それでも警戒を解くことは出来ずにいると、前を歩いている黄牙が溜め息をついた。

「・・・別に警戒しなくても大丈夫だぞ。この街の魔族がお前達を襲うことはない」

「どうしてそう言い切れるの?」


疑問に感じたらしく、鈴麗が声を上げる。


「それは・・・」

「それは、この街が窮姫達に対する反勢力の街だからだ」


黄牙を遮るように別の声が答える。

見ると、いつの間にか花音達の前に風夜が立っていた。

「反勢力?」

「そう。窮姫達に反発した者達の街だ。だから、お前達を此処に呼ぶのも、条件付きで許可してもらった」

「その条件というのは?」

「それについては、これから案内する所で聞いてくれ」


神麗に答えて、風夜が踵を返そうとする。


「待て!一体、何処に連れていくつもりだ?」

「・・・この街の代表、反勢力のリーダーの所だ。沙羅達も其処にいる」


風夜はそう言うと、歩き出した。