その煩さに水樹は顔を歪めながら耳を塞ぐ。
それでも聞こえるものは聞こえるのだが……
「嘘!あのヘタレがこいつかよ!ビフォーアフター半端ねぇ!」
主に男子の野太い声が聞こえてくる。
耳をふさいでも無意味と気付いたのか、ため息をつきながら手を離すとそれを待っていたかのように宗平が声を出す。
「そうそう!さっきはごめんね?辰巳と騒がしくしちゃって。」
"さっき"と言うのは今朝の話だろう。
女子はそれに関して「気にしないでいいよー」と首を振る。
「それは良かった。もうさ、ずっと気になってたんだよね。皆に悪い子としちゃったなーって。」
外向きの笑顔を向けながら言う宗平にはキラキラとしたオーラが見えるのではないかと思うほど…。
「………キモい。」
そう水樹が声に出してしまうほどだ。
「えー。何言ってるの?水樹ーキモいなんて酷いなぁ…。」
「いや、マジでキモいから。やめてくれ。」
「水樹ひどーい。」
途中でふざけに入ったのか、宗平はそんなことを言いながら水樹に抱き付こうとする。
抱きつく前にぶん殴られたが。
「懲りたか?」
「………うん、ごめん。」
殴られた頬を抑えながら立ち上がる。
その光景を見ていた生徒たちはポカーンとしていた。


