体感時間で2時間、3時間が経ったようにおもえた頃――本当は一時間も経ってはいないが――やっと最後の男を倒し終えた。
だが、水樹は舌打ちをした。校門の方を見ながら。
「あれ、どうしたの?そっちに何かある?」
「逃げられた。」
「あ?―――………あ。」
水樹のその言葉に二人が見回すと、倒れている中に渡辺たちは居なかった。
水樹たちが戦っている間に逃げたのだろう。
タバコの吸殻しか残ってない。
「はぁ…まぁ逃げられたものは仕方ないよ。」
「…そう、だな。」
水樹は頷きながら携帯を取り出し110番通報をする。
『薬やってる人沢山いるんで事情聴取でも何でもしてやって下さい』
そう言いたいことだけ言って携帯の電源を切り、教室に戻るため歩き始める。
「保健室の様子見に行かなくていいの?」
「ああ…忘れてた。」
「忘れてたって…オメェなぁ…」
疲れたのだろう少しふらつきながら歩く姿に二人は心配しつつも、水樹を引っ張って保健室へと向かう。
保健室に着くと、6人が仲良くトランプをしていた。
「おかえり。大丈夫だった?」
春が言いながら、残っていた最後のカードを置く。
「…何でこう俺らが頑張ってる時にテメェらは遊んでんだよ。」
「いや、だって暇なんだもん。」
「で、どうだったんだ。」
頬を膨らせながら言う燈蔭を横目に水樹と宗平に向けて問いかける。
「渡辺たちには逃げられた。」
「…そうか。」


