翔たちが襲われる前に遡り…
拓弥は渡辺に呼ばれ大勢の中の一人となっていた。
周りには数十人の男子。手には鈍器を持っている。
拓弥は何となく嫌な予感がし、後ろの方で渡辺達を観察していた。
その予感は的中し、渡辺に支持を出された男が金属バットで一人の…見知った少年の頭目掛けて振り下ろした。
少年……燈蔭は振り下ろされる瞬間に気付き振り向いたが一歩遅く。
――――ガンッ!!!
と音を立てて燈蔭の頭にぶつかった。
「っ――――!」
拓弥は勢い良く駆け出し殴った男の背中を蹴り、倒れそうになったところで頭に踵落としをした。
「おいおい拓弥くん、なぁに手ぇ出してんだよ。仲間だぞ?
お前が殴んのはそっちの三人組だろうが。」
「…クラスメートを不意打ちで殴る奴と一緒にいる事なんか出来ない。」
「……黒城。」
翔は燈蔭を支えながら、驚きに目を丸くした。
「ふぅん?まぁ良いけど。元々お前も殺る気だったしなぁ!」
渡辺が合図を出すと、拓弥たちを取り囲むように男どもが散らばり、襲い掛かってきた。
ここは学校の敷地内なのだがもうどうでもいいようだった。
男どもの目は確実に薬物を乱用している瞳だったのだから。
大方、拓弥たちを倒したら薬をあげるだとか言われたのだろう。
「ちっ…おい村松。退路を開くぞ。」
「了解した。翔は腕を庇いながら応戦しながら逃げてくれ。」
「…あ、ああ。燈蔭、大丈夫か?」
翔の心配そうな顔を見て燈蔭は辛いのにもかかわらず、頷いた。
翔だってそれに気付いたのだが、彼が大丈夫だと言ったのだから大丈夫だろうと思ったのだ。


