水樹と翔が握手をしていたら、先生に「HRだぞ、前向け。」と怒られた。
「ご、ごめんなさいっ!」
「先生が生徒同士、仲良くなるのを遮っていいんすかー?」
翔がブーブーと抗議するが
「そういうのはHRが終わってからやれっての。」
その一言で玉砕。
うぐっ…なんて言って机に突っ伏しながら先生の話を聞いている。
「一時間目は…って、LHRか。なら、交流会だ!」
机にバンッと手を叩きつけながら言う。
一瞬、シーン…となったがすぐに、生徒達の歓声で静けさは消えてしまった。
「最初の十分は水樹への質問会、そのあとは…修学旅行の班割だ!」
「え、十分もやるんですか!?てか、しゅ、修学旅行!?」
これには流石の水樹も驚いたのか、半分素になりながら質問する。
「何だ水樹、親から聞いてなかったのか?」
「き、聞いてません!」
「そうか…なら後で説明してやるよ。」
「あ…ありがとう、ございます。」
「放課後にな?…で、誰か水樹に質問したい奴いるかー?」
水樹は頭を抱えながらポツリと呟く。
「放課後とか…あんま時間ねぇよ…。」
はぁ…と溜息をこぼしながら顔を上げると、いかにも不良という感じの男が手をあげていた。
「お、祐一。お前が手あげるなんて珍しいなぁ。質問は?」
「熊野はぁ…男ですかぁ?女ですかぁ?女々しすぎてわかんねぇー。」
ゲラゲラと周りの不良たちと一緒に笑いながら聞いてくる。
「……男、ですけど。」
少し、気持ちの悪い喋り方に苛つきながらもボソッと、でもはっきりと聞こえる声で言う。
「男だったんだー!気付かなかったわー。てっきり、男の制服着た女かとー。」
「祐一、お前、少し度が過ぎるぞ?」
先生が祐一という生徒に叱っているのを横目に、水樹は誰にも聞こえないように愚痴る。
「はぁ…これは、いじめられそうだなぁ。」
「ん?水樹なんか言った?」
と、思っていたが、翔に聞かれていたようだ。だが、内容は聞こえてなかったようで「な、何でもないですよ!」というと
「そう?困ったことがあったら言ってくれ、助けになるからさ!」
なんて、にっこり笑顔で言った。


