白黒のぬくもり

何かくわえてなかった?

ドタドタと足音を立ててママが走ってきた。
「アルト!アルト!!」なんだか必死の形相…
起き上がって
「何、どうしたの」
ママは眉間に皺を寄せて
「アルトが焼き鮭くわえてったよ!まったく、あんたが甘やかすからっ!!」
鮭を?
アルトが?

ああ、鮭くわえて行ったのかぁ…
見れば庭先で鮭と思わしきものをムシャムシャやっている。
それを見付けたママがまた「アルト!!」と怒鳴って庭先まで駆け寄る。

アルトは遠目にも解るくらいにビクッ!!として、食べかけの鮭を置いて逃げていった。

それが可笑しくて、くすくす笑っているとすぐにママの怒声が聞こえた。
今度は私がビクッ!とする。

「ちょっと!あんたここ泥だらけじゃないの!」泥?
アルトの足型に無数の泥…
引きつった笑いで「昨日雨降ったから…」と言う言い訳虚しく、雑巾が叩きつけられた。

はぁぁ…自分で足くらい拭いて入ってきてくれればいいのになぁ……。

その後、いつも通りに帰ってきたアルトはママに捕まってこっぴどく叱られた。耳も毛も全部ねかせて、ビビっている。
ママは普段アルトには触れないくせに、こういう時は別のようだ。