白黒のぬくもり

険しいような、慈しむような顔をしたばあちゃんは、「こんな雨の日出てったら駄目だぁ」丸くなったアルトの頭を撫でた。

その晩は窓を締め切って眠った。


翌朝目覚めると外は明るい。
先月から雨が連日続くことは少なく、今日も晴れていた。

布団から頭をあげて庭先に目をやるとばあちゃんが洗濯している姿が見えた。

「おはよ、アルトは?」
ばあちゃんは竿にかけた洗濯物を手で掻き分けて花壇を指差す。
いつもの場所に、昨晩の事なんて覚えてない風な様子でアルトが寝転んでいた。
「アルトにご飯あげた?」実家に来てからは朝ご飯は一番はじめに目が覚めた人があげる事になっていた。「まだあげてないよ」

そっか。
庭に面したテーブルの椅子に座ってタバコを吸う。

洗濯物を干す老婆に眠る猫、平和な光景だ。

カリカリを新調した器にざらざら入れていると、チリンチリン音をさせてアルトが寄ってきた。
この鈴の音は室内にいた頃はそう便利なものだとは思わなかったけれど、外では役に立つものなんだなと思う。

「アルトおはよう」
小さくニャアと鳴いてご飯に噛り付く。

返事した??

「アルト?」
もうご飯に夢中で聞いてもいないようだ。