白黒のぬくもり

アルトの小さな足を拭く、ついでに肉球もぷにぷにしてみる…。

「初めてのお外は楽しかったんだね?」
「そうなんだよー!すっごいの!虫とか飛んでてね、それから超でっかい猫がいたんだよ!!」そんな感じだった。

綺麗に足を拭き終えて、アルトを抱っこして振り返るとまだママがいた。
面白半分でアルトをママに近付けると、うわぁともぎゃあともわからないような声をあげて逃げていった。
「可愛いのにね、失礼しちゃうね」アルトと顔を見合せる。


アルトは白黒だけれど、ママから言わせれば真っ黒の毛の固まり、だそうで。

でも不思議とアルトはママが好きなようだった。

実家にきて暫くするとママが悲鳴をあげるのを何度も聞いた。
行って見てみれば、アルトがママの足にスリスリ…
「アルちゃん!スリスリやめなさい!」ママは不器用に足をひょこひょこあげる。

アルちゃん?
ママがそう呼びはじめたんだろう。
嫌い嫌い言っているくせに、ちゃん付けで呼ぶなんて…とおかしかった。



ある激しい雨の晩、アルトは窓を開けて遊びに出ていってしまった。
夜だし、雨だし、庭先から大声で名前を呼んでも戻ってこない。
「どこまでいっちゃったんだろう…」