白黒のぬくもり

アルトにおやつをあげて、簡単に荷物を整理する。
着るものだけは出しておかなきゃならない。

『衣服』と書かれた段ボールを取り出す。
それを押し入れの中へ押し込んだ。
「これで十分」ポンポンと叩いて押し入れを閉める。

「アルトは?」さっきと同じ格好のまま座っているばあちゃんに聞くと、ばあちゃんは庭先を指差して
「ほれ、あそこ」指差した先を見ると、梔の木の裏のブロック塀をたったっと歩くアルトが見えた。

ええ!外でちゃったよ!

「アルトー!アルトー!」呼ぶとこちらに気付いて塀をおり、庭の草むらを抜けて私のところへやってきた。

「あんまり遠くへ行ったら危ないよ?お家の周りだけだよ?呼んだら帰ってくるんだよ?」

わかってくれただろうか…
そのままアルトは庭を飛び出ていった。

大丈夫かなぁ…この辺は野良猫多いいしなぁ…
迷子にならないかなぁ…

色々と不安がでてくる。


一時間ほどするとアルトは庭の窓から帰ってきた。
「おかえり、楽しかった?」そこへ濡れ雑巾が投げられた。
振り返ってみればママで、何すんの!と言おうとしたら
「外から上がってきたら足汚いでしょ、足拭いてあげなさい」そっか…足汚いもんね。