「おぉ、レゲエ馬鹿って感じになったね。アルト入ってごらん?」キャリーの匂いを嗅いだり様子を伺っているアルトをキャリーの中に押し込んだ。

カチッと鍵をする。中からきょとんとした顔のアルトが見える。
キャリーを持ち上げてみた。そんなに重くない。
「可愛くできたしよかったね、アルト」
キャリーを下ろして鍵をあけるとゆっくり中から出てきた。
こちらを見つめる。

「お引っ越しするでしょ?その時アルトはこの中に入って行くんだよ」
「えー…狭くて嫌だなぁ…引っ越しって何?」そんな表情を見せる。

「横浜のお姉ちゃんの実家だよ、おばあちゃんとママがいるの。お庭もあるよ?」アルトは外に出たことがない。
外に出してはいけないって書いてあるけど、やっぱり外出させてあげたいな…
実家のあたりは下町で車の通りも全くなく、庭先や林家の庭先にも木やら花壇やらが沢山ある。

猫を飼っているうちもおおく、また野良猫も多い。

今まで完全に二人きりで生活してきたから、アルトは実家の環境にどう思うだろう??


夜中に健二からメールが来て金曜は10時には行くから!と、引っ越し時間が決った。

もうこのアパートにいるのもあと1日…。