しばらく僕は、散らされた紙くずを凝視する彼の横顔を眺めていた。
何が見えているのだろう。
元カノの怨霊とか?
彼だけに見える妖精さんとか?
そんなことを考えてたら、いきなり声をかけられてしまった……⁉︎
「お前、何組?」
「え?D組だけど。」
「…ふーん。お前、小学生の頃とかどんな奴だった訳?」
なんかいきなり質問とかしてくる。
気まぐれなやつなのかなぁ。
「小学生の頃……ねぇ……はぁ……」
思わず僕は考えこんでしまう。
何故なら僕に、幼い頃の記憶が無いからだ。
夏休み、虫を追っ掛けたような思い出。
悪友みたいな奴と馬鹿やった思い出。
家族と行った旅行とかの思い出。
そんな、誰にもあるような思い出が僕には無かった。
というか当時の思い出が全然無い。
彼みたいに『興味がない』から覚えていないのかもしれない。
まさか、中学時代どこかに頭をぶつけたとか?
原因は幾らでも想像できるが、思い出せない。
記憶は無いのに、想像力はある、そんな僕だ。
