扉を開けると、教卓に腰掛けこちらを見てくる湖歌君と目が合った。
とりあえずニコッと笑ってやろう。
ラブレターらしき物体を破り捨て、彼は口を開いた。
「…………今日も来たし」
「えへへ、鍵空いてたし」
彼のに向かって歩く。
そして、教師の机の上にどっかり座る。
「うわーいけないんだー」
彼が無表情で言う。
「教卓よりはマシだしーあははっ」
笑って破る前のラブレターを手に取ってみる。愛美、と名前が書いてある。
彼はラブレターを手に取った僕を見て、
「何?お前も破りたいわけ?」
とか言ってくる。
しっかり僕のこと気にしてるな。
でも、邪魔をする気はない。
「いやいや、やぶりはしないよ。」
てをひらひらと振る。
「読むなよ。うざいから。」
「はいはい。ちぇっ、残念だなぁ。」
「……」
彼はまた黙り込む。
ビリッ、ビリリと紙の破ける気持ちのいい音が僕の耳に入ってゆく。
道徳的にどうかと思うなぁ、でもよく分からないしもういいや。
彼は破り捨ててある、色とりどりの散らされた紙くずを見つめている。
なにか幻覚でも見えてるのかよ、と声を掛けたくなるが、話しかけることが躊躇われる程に彼は紙くずに熱中している。
「……だいじょーぶ?」
彼に届くか届かないかの声量で呟いた。
