【短編】君の声




壁に掛かる時計を見て、少し気分が下がる。


………もう6時か…


「…そろそろ帰るね」


捺芽との時間はあっという間だ。

学校のことを話したり、
宿題を教えてもらったり、

捺芽の隣は穏やかで、楽しい。




『…送る』


捺芽の家から私の家までは徒歩で5分ほど。

たった5分の距離。
1人で帰れると言ってもいつも送ってくれる。

………それでもこの帰り道は、
僅かでも、捺芽と一緒にいられる時間。







「うん!」


捺芽ママに挨拶をして、帰路につく。










手を繋いで私の家まで歩く。

この時間は、

幸せだけど、少し寂しい複雑な時間。




案の定、すぐに私の家に着いてしまう。




『……また明日』


離された手に寂しさを感じながらも、


「うん、また明日ね」

笑顔で捺芽に手を振る。






捺芽は少しだけ微笑む。


私の頭を撫でて、

いつものように彼は帰って行く。










捺芽の後ろ姿が見えなくなるまで……

私は見送る。




今すぐ抱きつきたい衝動を抑える、

………………甘く切ない時間だ。