この部屋に来ると思い出す………
捺芽が声を忘れた理由。
捺芽が声を忘れたのは3年前。
ご両親と捺芽。
仲の良い3人家族だった。
いつものように3人で出掛たあの日。
捺芽たち3人が乗った車は、
信号無視をしたトラックに正面衝突された。
それは大きくニュースにも取り上げられるほどの悲惨な事故だった。
運転をしていた捺芽のお父さんは即死。
捺芽ママは脚に後遺症が残るほどの大怪我。
捺芽自身も頭を強く打ち、
意識不明の重体だった。
なんとか目を覚ました捺芽に告げられた、
大好きな父親の死と母親の変わり果てた姿。
13歳の捺芽は…………
それ以来、声を忘れてしまった。
私が彼に好きだと告げた時、
彼は少し苦しそうにこのことを教えてくれた。
━━このことを聞いても、
……同情なしに俺のことを好きだと言えるの?
初めて見た彼の涙。
不謹慎にもその涙はあまりにも綺麗で……
私はただ腕を精一杯伸ばして彼を抱き締めた。
━━━こんな男を好きになるなんて、
……璃唯は変わり者だね。

