高2になって急に関わるようになったわたしなんかよりずっと長い間、一緒に絵を描いてきた仲なんだから、百井くんに声をかけに来るのは実結先輩が一番の適任で、同時に実結先輩しかいなかったんじゃないかと、そう思う。

そんなことを考えていると、美術部のご一行様も、それぞれに傘を広げて外に出て行った。

行列のようなそれをひとまず見送り、わたしもカラフルに傘の花が咲いた彼女たちのうしろを10メートルほど距離を開けて、てくてく歩き出す。


「……信じらんないな。絵を壊したなんて」


傘の中で、たまらず独りごちる。

あんなに真剣に絵と向き合っている百井くんなのに、そんな人が絵を壊せるものなのだろうか。

自分の描いた絵ならまだしも、ほかの人の――ましてや実結先輩の絵を壊しただなんて……。

実結先輩が持田先生に恋をしていることにも驚いたけれど、それよりもわたしは、百井くんのその行動がどうしても信じられなかった。

だって百井くんは、見ているこっちが恥ずかしくて目を逸らしてしまいたくなるくらい、本当に愛おしそうに絵を描く人だ。

そんな百井くんを、わたしはこの数か月、自分の目で見て、雰囲気や空気感を肌で感じて、そうして知った。