「確かにね! あいつら、生徒会のトップなのに普段の存在感は空気並みだからねー。モモちゃんもなかなか上手いこと言うじゃないの!」
「そ、そうですか?」
「うん! モモちゃんがあいつらに忘れられる、ってところじゃないのが私的にツボなのよ。そういうモモちゃんのあけすけな感じ、私好きだなー」
そう言うと、曲がりなりにも自分の彼氏を空気扱いする美遥先輩は、しばらくそのまま笑い続ける。
わたしのほうも、美遥先輩にも部長にも大概失礼なことを言ってしまったけれど、気分を害した様子もなくあっけらかんと笑い飛ばしてもらえて、正直なところ、助かった部分が多い。
底抜けに明るい美遥先輩のおかげで、さっきの美術室でのことも、少しの間、忘れられそうだ。
「あれ、賑やかだと思ったらモモじゃん!」
「久しぶりー。俺らの顔、覚えてるー?」
そうこうしていると、美遥先輩の言う“空気”ふたりが部室に現れた。
部長は黒縁メガネの奥の瞳をうれしそうに細め、副部長は部長と自分の顔を交互に指さしながら「覚えてる?」と首をかしげる。


