消去法でいくと、写真部に顔を出すのが一番無難。
それに先輩たちは、唯一の部員であるわたしになにかと甘く、幽霊部員もいいところなのに、怒るどころか顔を出すたびに大歓迎してくれる。
……今日は、めいいっぱい甘やかされたい。
そんな気分だ。
そうして写真部の部室に顔を出すと、
「お久しぶりでーす」
「やっほー、モモちゃん!」
「あれ、美遥先輩?」
どうやら今日は先客がいたらしい。
わたしを〝モモちゃん〟と親しげに呼び、ほいっ!と片手を上げてあいさつをしてくれたのは、つい最近テニス部を引退した藤野美遥先輩だった。
肩甲骨あたりまで伸ばしたツヤツヤの黒髪をポニーテールに結び、結び目に赤いバンダナを巻いてリボンの要領で使っている、とっても個性的なセンスの持ち主だ。
性格も微妙に不思議系が入っているけれど、とにかく明るく、先輩といるとやたらと楽しい。
そして、美遥先輩といえば、美術室のカーテンを洗濯するときに大変お世話になった先輩だ。
亜湖に頼んだところ、即却下されてしまって。
それでも粘り強く追いすがっていると、騒ぎを聞きつけた美遥先輩がわたしの味方に付いてくれて、無事にテニス部の洗濯機を使わせてもらえたという経緯がある。


