百井くんの意図を汲み取り、あははと若干大げさに笑いながら、机に置いていた自分の荷物を肩にかけつつ、ふたりの横を過ぎて美術室を出る。
少し体をよけてわたしが通る隙間を作ってくれたふたりは、わたしが数歩足を進めたところで振り向いたときには、もう美術室の中に消えていた。
「……、……っ」
そのとたん、どういうわけか胸にチリチリとした痛みが走って、不思議に思いながら胸に手を当てる。
先輩は部のことで百井くんに会いに来た、百井くんの居場所は2、3年の部員ならみんな知っている、部外者のわたしがいても邪魔になるだけ。
頭ではわかっているのに、訪ねてきたのが実結先輩じゃなかったら……なんて一瞬でも考えてしまう自分の思考回路に、なかなか理解が追いつかない。
あれ、おかしいな、と首をかしげつつ、仕方がないので行くあてを探すことにする。
美術室にはいられなくなったけれど、かといって写真部に顔を出す用事があったなんて、あの場でとっさについたうそだった。
写真部の主な活動は、校内行事のときの生徒の撮影、コンクール用の写真の撮影、卒業アルバムや学校紹介のパンフレットに写真を提供する、の3つ以外には、これといってない。


