先輩も先輩で、わたしと話していたときより、どことなく気まずそうな雰囲気を醸し出していて、それから先に続く言葉がなかなか出てこない様子だ。

下を向いて歩いてきたのか、百井くんは美術室に着くまで先輩が訪ねてきていることに気がつかなかったらしく、先輩も出入り口に立っていたけど中にいるわたしと話していたから、百井くんの気配に気づかなかったらしい。

歩くたびにギイギイ言う廊下が唯一、人の気配を教えてくれるわけだけれど、百井くんやわたしは、最近は音があまり鳴らない部分を歩くようにしていて。

だからもれなく全員気づかなかったと、どうやらそういうことのようだ。


3人が心の準備もなく集まってしまったところで、わたしたちの間に気まずい空気が流れはじめる。

ここは部外者のわたしが場の空気を盛り上げつつ出ていったほうが……と思い、口を開きかけると、


「ニナ」


その空気を破ったのは、意外にも百井くんだった。

一言わたしを呼ぶと、彼は小さく目配せをする。


「……あ、今日は写真部に顔出さなきゃならない日だった! わたしってば、うっかり!」