ただの先輩後輩だとわかってほっとしたり、こんなふうに気持ちが露骨に顔に出てしまったり。……いったいわたし、どうしちゃったんだろうか。
なんとも言えない気まずさを抱えながら、さっきと変わらない様子で「というわけだから、ここでナツくんのこと待たせてもらってもいい?」と尋ねる実結先輩に「いいですよ」と返事をする。
部のことなんだから、ここで待つのなんて当たり前だ。
むしろわたしのほうが席を外したほうがいいくらい。
あれ、でも待って。
先輩の顔、どこかで見たような気が……。
その既視感のある感覚に、頭の中で、どこで見たっけとおぼろげな記憶を掘り起こす。
……確かに見たような気がするんだけど、いつ、どこで、どんなふうに見たんだっけ?
けれど、つい最近のような感覚があるのに、なかなか思い出せなくて、なんだか心の中がもやもやする。
「あ、ナツくん」
「……実結先輩」
「久しぶり、だね」
「はい……」
すると、唐突にそんなやり取りが耳に飛び込んできた。
はっとして意識をそちらに向けると、ワイシャツを腕まくりした手にバケツを持ち、絵を描くときはいつもしている絵の具だらけのエプロンをかけた百井くんが、実結先輩の姿を見て目を丸くして驚いていた。