親しげに〝ナツくん〟なんて呼んだりするから、一瞬、ドキッとしちゃったけど、百井くんと同じ水彩画専攻だそうだし、1年も一緒に絵を描いていれば仲良くなったって全然不自然なことじゃない。

もしかしたら隣の席同士だったのかもしれないし、それなら会話する機会も多いし、ニックネームで呼んだりすることも、きっとあるのだろう。

そんなふうに先輩が百井くんを〝ナツくん〟と呼ぶ理由を考えて頭で納得させて、わたしはほっとする。

……どうしてか、ほっとしてしまったわたしだ。

すると実結先輩は、スケッチブックを抱えたまま器用に手をパタパタとさせながら、慌てた様子で言う。


「あ、誤解しないでね。今日は部のことで用事があって、私が代表で来たの。ナツくんがここにいることは2、3年の部員はみんな知ってるし、だから、特別私しか知らないわけじゃないから安心してね」

「……え?」

「だって百ノ瀬さん、すごい複雑そうな顔してるから」

「え、あっ。すみません……」

「ううん」


にっこり笑って首を振る先輩に急いで頭を下げる。

やだもう、なにしているんだろう、わたし。