彼女が百井くんのことを〝ナツくん〟と呼ぶことに若干の違和感を覚えつつも、彼の居場所と自分のことを、しどろもどろになりながらも、なんとか説明する。

自分で言っておきながら〝友だち〟という単語にも妙に引っかかりを感じたけれど、すぐに彼女が、つい、といった感じで口にした〝モモ〟という言葉に引っかかり感はシフトチェンジしていった。

彼女のこの様子だと、百井くんと知り合いなのは確かだろう。

でも、どういう関係なのかがやけに気になってしまって、落ち着かない心持ちになる。


「今のは気にしないで。あ、そうだ、まだ名乗っていませんでしたよね。私は美術部3年、水彩画専攻の井上ミユです。実を結ぶで〝実結〟って書くの。みんなからは、そのまま名前で呼ばれてます」

「あ、ご丁寧にありがとうございます。わたしは百ノ瀬ニイナって言います。杏仁豆腐の仁に菜っ葉の菜で〝仁菜〟で、百井くんとは仲良くさせてもらってます」


にこにこと人好きのする笑顔で自己紹介をしてくれた実結先輩に、わたしも自己紹介を終えると頭を下げた。

なんだ、美術部の先輩か……。