おそらく百井くんがしている恋は、あのスケッチブックしかり、絵を描くときの表情しかり、まさに切ない系の恋のようにわたしには見える。
恋をすれば誰もがハッピーエンドを望むのに、好きになった瞬間から運命づけられている切ない恋の結末は、やっぱり切ないままなのかな……。
そう思うと胸がぎゅっと苦しくなって、百井くんを見るにつけ、わたしは今のままがいいなと、どうしても楽な方に気持ちが向いてしまう。
恋はよく〝する〟ものじゃなく〝落ちる〟ものと例えられるけれど、少なくともわたしは、今のまま、付かず離れずのこの関係が、一番居心地がいい。
だってわたしは、スケッチブックの彼女の代わりだ。
クラスメイト以上で友だちだけど、代わりだもの。
だから、無理な恋はしたくない。
百井くんと関わる理由、依然〝不明〟――。
そう結論付けると、なぜかほんの少しだけ胸の奥が焼けるようにチクリと痛んだけれど、それに気づかないふりをして、わたしはそれからも、時刻とともに変化していく色の中で黙々と絵を描き続ける百井くんの横顔をそっと見つめていた。