だって、もし無許可で写真を撮ったとして。

それを百井くんになにかの弾みで見られてしまったとしたら。

真っ赤になると、一見すると照れているのか怒っているのか判別が難しい彼のことだ、仮にもし本気で怒っていたら、わたしはいったい、どうすればいいのだろうか。

想像しただけでめちゃくちゃ怖そうだし、絶対に勝てそうにないし、美術室に来るなと言われた日には、タイムマシンを本気で探すだろう。

だからわたしは、人物写真――とりわけ百井くんの写真だけは撮らないと心に決めている。

だって、本当にあるかもわからないタイムマシンを探すハメにはなりたくないもの。


それにわたしは、恋はよくわからない。

恋ってどういうものですか? から入門しなければならないわたしが、いったい百井くんに恋のなにを語れるというのだろう。


切なくて、いつも胸が苦しくて、想うだけの恋。

それならいっそ、誰か違う人を好きになれたらいいのに、時間が戻ったらいいのに。

そう願っても、絶対に諦められない恋。


「……、……」


真剣な表情で絵を描き続ける百井くんの横顔を眺めていたら、思わずきゅっと下唇を噛みしめてしまった。