絵の具を混ぜ合わせて色を作り、一筆一筆を丁寧に繊細に、ときには大胆に使いながら、時間と愛情をたっぷり注いで描き上げるのが絵。
対して写真は、一瞬を閉じ込めるもの。
極端な話、永遠と刹那みたいに違いはあるけれど、被写体に真剣に向き合う部分は同じだし、自分が納得できるものに仕上がるまで何度でもやり直すところも、とてもよく似ていると思う。
似ていないようで実は似ているのが絵と写真かもしれないなと、最近、また写真を撮り始めるようになってから、わたしはよく思ようになった。
見た人を感動させたり、幸せな気分にさせたり、考えさせたり、言葉では伝えきれない想いをそっと込めたり……ふたつとも、そういう媒体だ。
百井くんの絵は、どんなふうに仕上がるんだろう。
ふとそう思い、スマホの画面から顔を上げて百井くんの様子をそっとうかがってみる。
すると、わたしとのおしゃべりにつき合って絵筆を握る手が止まっていた彼の手が、いつの間にかイーゼルに立てかけたキャンバスとパレットの間を忙しく往復していた。
ここからは、本当に邪魔しちゃいけない。
集中しはじめた百井くんは、びっくりするほど真剣で、愛情のこもった目をしていて、でもときたま切なげで……そして、とびきり格好いい。


