けれど百井くんは、丸投げもいいところだった。
思わず身を乗り出したわたしとは反対に、涼しい顔でパレットに絵の具を絞り出している。
もう……。
亜湖になんて言えばいいの。
池のんから掃除用具入れの整理を頼まれたら、なぜか上からスケッチブックが落ちてきて、思わず中をのぞいていたらヤンキーで有名な百井くんに見つかって、しかも持ち主はその百井くん。
それがきっかけで関わるようになって、モデルを頼まれたものの顔から下だけ。
でもわたしは、それでいいと思っている。
――って、こんなの正直に話せるわけないじゃん!
「もういいよー。いろいろ考えたら頭疲れちゃったし、今のところは現状維持。亜湖には申し訳ないけど、秘密ってことにするー」
百井くんじゃないけれど、なんだかとたんに面倒くさくなってしまって、わたしは長机から下げた足をブラブラさせながら、ここ最近ずっと考えていた問題を〝秘密〟で片付けておくことにした。
とりあえずの処置として〝百井くんとわたしの秘密〟ということにしておけば、亜湖になにか聞かれたときにも、一応は格好がつくだろう。


