背中から落ちても、正面から落ちても、どんな落ち方をしても、男の子の胸の中にすっぽりだ。
くっそう、それなのにわたしは……。
「ニナ、悪かったって」
すると、わたしには少女漫画チックな奇跡は起こらなかったか……と落胆するわたしのそばにしゃがみ込んだ百井くんが、目線を同じにしてそう口を開いた。
それは、いつもの一本調子の口調でもなく、暴君すさまじいわけでもなく、優しくて温かく、深みのある、とても静かな声だった。
その声に、心の中のささくれ立った部分が急速にしぼんでいく感覚を覚えて、
「……ううん、わたしこそごめん」
わたしはようやく、さっきから謝りたくても謝れなかった謝罪の言葉を口にすることができた。
けれど、八つ当たりもいいところのわたしは、とたんに恥ずかしくなってカーテンに顔を埋める。
百井くんが大人の対応をしてくれているぶんだけ、自分が本当に子どもっぽすぎて顔が上げられない……。
「ニナはあれだ、寂しい……?」
そうしていると脈絡なく百井くんが尋ねてきた。
彼にはして珍しく、きちんとした質問形になっているそれは、ぎこちなさすぎて、思わずぷっと吹き出してしまいそうなくらい、たどたどしい。


