すると、首をかしげるわたしの耳に声が入る。
「ニナ、意外とグラマラス」
一瞬なんのことだかわからなかったけれど、その声が聞こえたのは、まぎれもなくわたしの胸のあたりで。
ぎょっとして床から胸のほうへハイスピードで顔を向けると、目に飛び込んできたのは、わたしの胸に押しつぶされるような格好で苦しそうに「けほっ」と咳き込む百井くんの胸元で。
「ななな、なにしてんのよおぉぉっ‼」
状況を把握した瞬間、わたしはあらん限りの声で絶叫し、その絶叫は、古びた旧校舎中に、それはそれは見事にこだましていった。
*
それから十数分。
わたしは、脚立から落ちるときに掴んでいたらしいカーテンを体にぐるぐると巻き付け、窓際の壁に背中をくっつけて体育座りをしながら、先ほど起こった床ドン事件について、犯人である百井くんから厳しく調書を取っていた。
あの体制は、まさしく床ドン。
わたしが百井くんを床ドンだったのだ。
だからわたしは、どういう経緯で胸元でわたしの胸を受け止めることになったのか、その詳細が知りたい。


